Vo.4 仕訳帳 ~簿記の記録:その2~

来訪頂きありがとう御座います。さるやです

 今回は前回の続きである、簿記の日常の記録方法である「仕訳帳」と「総勘定元帳」のうち「仕訳帳」について役割を話していきます。

 その前に前回の復習です。前回は簿記の五つの要素は下記のようにまとめられて、さらに細分化された日々の記録が必要であることに触れました。その日々の記録をするノートのことを「総勘定元帳」と呼び、その各々のページは記録する項目が決まっていて記録する内容(勘定科目)ごとに記録する場所が勘定口座であるという話をしています。

 そして各「勘定科目」の性質は五つの要素のどれかに属し、増えたり減ったりしたときに右側に記録するのか、左側に記録するのかが決まっていると言う話でした。

 今回、解説していく「仕訳帳」も日々の記録をしていくノートなのですが、何の役割があるのでしょうか?「仕訳帳」の役割はズバリ、記録のミス防止です!えっ!?と思った方、簿記の歴史は古いのですよ。その原型が伝わった時代は当然、PCなんてありません!手書きです。そして計算機も存在していたしてもそろばんがいいところではないでしょうか。そんな手書きで記録いたものです。作業をするのは人間です。日常の記録をミス無く行っていくのは恐らく不可能でしょう。PC入力の昨今でさえミスはあるのですから。したがってミスを防止する役割を持たせた「仕訳帳」が出てくるわけです。そして簿記の検定試験を踏まえると試験に持ち込み可能は電卓であって、PCではありません。なので実務を少し行っている経理担当の方は、検定試験用の簿記を実務とは違う、まったく別物のように感じてしまいます。実務ではPCソフトが最初の初期入力を済ませることで、一気にゴールである損益計算書・貸借対照表までを自動入力してくれるのですが、手書き時代の簿記はその自動入力部分も勉強しなくてはなりません。簿記の仕組みを知っていると言うのは、PCソフトの中身が分かることであるのではないでしょうか。

 では「仕訳帳」について具体的に解説していきます。役割はあくまでミス防止です。どんなミスかと言うと、日々の記録を「総勘定元帳」に直接記録すると、たくさん記録しなければいけないときに記録の漏れが発生します。また「総勘定元帳」の各ページに勘定科目ごとに増減を記録することになりますので、ページの見間違いなどが発生し、間違ったところに記録してしまうことになります。なので、「仕訳帳」は次の記録ノートとなる「総勘定元帳」のどの科目の右か左かと言うように、行き先を簡単に示してあげるものなのです。まさに仕分け作業ですね。

 例えば、「手元にあったリンゴを現金100円で他人に販売した。」としましょう。そうするとこの取引には①現金が100円増えたこと、②売上が100円あったことが読み取れます。①資産に属する現金が100円増えたことになりますので、総勘定元帳の現金を記録する現金勘定で増加したことを記録します。現金は資産なので増加したら左側に記録します。②販売したことでお金を増やす要因となった100円は売上に記録です。売上は収益に属していますので売上勘定の右側に記録します。

 取引量が少なければ問題なく感じるかもしれませんが、日々の記録としてたくさん記録する状況になると、ミスしてしまうのが人間です。なのでミスを防ぐ手段として上記のように「総勘定元帳」に記録をする為に、行き先を決める仕分け作業を「仕訳帳」で行います。例を仕訳すると下記のようになります。

 凄くシンプルですが、これを見ただけで現金のページの左側に100円を記録して、売上のページの右側に100円を記録すると言う指示になるのです。上記のような指示だしを日々記録していくのが「仕訳帳」の役割です。ここまでの流れをまとめると下記の通りです。

 検定試験対策としては、資格学校や独学書籍では主にこの仕訳を重要視しております。ですが見た目と役割が違うだけで、考え方は仕訳と勘定は変わりません。単発の記録知識としては仕訳ですが、集計としては勘定のほうが優れています。出来ればどちらも出来るようになって欲しいのが講師時代の本音でした。

 以上、5回にわたり簿記の概要部分を解説させて頂きました。次回、もう一度復習解説を行ってから、各論に入って行きたいと思います。

今回も最後までお読み頂きありがとうございました。次回も宜しくお願い致します。

さるや
  • さるや
  • 鎌倉市在住/簿記の元講師/現在は一般事業会社にて経営企画として経験を積んでいます。/専門は工業簿記・原価計算/社会人講座クラスを3級・2級・1級工業簿記を担当

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