簿記3級 売上原価勘定の決算整理仕訳

みなさん、お越し頂きありがとう御座います。さるやです。

今回のテーマは売上原価の決算整理の仕訳を解説していきます。この内容は試験の出題傾向を踏まえて仕入勘定で売上原価を計算する方法を既に別の記事で書かせて頂いております。今回は仕入勘定で計算するのではなく、計算する為に「売上原価勘定」を設けて計算する方法になります。この処理方法は日商簿記3級の出題傾向を考えると10%程度の出題実績と考えていますので、ガッツリ勉強すると言うよりは検定試験の直前で抑えて頂ければ問題ないと考えています。

ではまず復習となります。

○決算とは

決算とは簿記の記録ルールにのっとって正確に記録をしてはいるものの、ルールを守ったとしても防ぎきれない記録の矛盾が生じてしまいます。その記録の矛盾を決算期間において一斉に対応必要箇所を修正していく一連の作業を決算処理と言っていきます。その際に行われる修正は全て仕訳で行われますので、決算に行われる修正仕訳を特別に「決算整理仕訳」と呼んでいることになります。

では本題に戻り、記録上の矛盾が本当にあるかを確認しましょう。前提として日商簿記で採用されている商品売買の記録は「三分法」と呼ばれる方法で行われていますのでそれを前提にします。

○三分法

三分法は商品を仕入れるときは「仕入勘定」、商品を売上げたときは「売上勘定」、そして商品が売れ残り在庫として残ったときは「繰越商品勘定」の3つの勘定を使って商品売買を記録することになります。つまり、各状況において下記の仕訳がされていきます。


※商品を30,000円を現金仕入した前提

※商品20,000円を50,000円で現金売上した前提

ここまでが、決算に入る前段階の期中取引と呼ばれる日常取引です。在庫を記録するときの「繰越商品勘定」は決算のときに使用します。

個々で何で、決算整理(記録の修正)が必要か見ておきましょう。売上時に注目してください。

売上時に商品原価20,000の商品を50,000円の売価で売上増した。50,000円分の売価は収益として売上に仕訳されます。一方商品原価の20,000円は記録されていますでしょうか?正解は何も仕訳上では記録されていません。

本来であれば売れた商品原価20,000円を売上原価として記録すればよいのですが簿記の考え方はその都度、その記録はおこないません。

そもそも、商品売買は商売をしている以上、日々毎日のように記録がされているはずです。したがって膨大な量の「売上の記録」、膨大な量の「仕入の記録」を行う必要があります。通常の売上の仕訳、仕入の仕訳をしている最中にその都度、売れた商品原価の記録「売上原価」を記録するのは手間を増やし、手書きの簿記時代のことですのでミスの原因にもなることでしょう。したがって、売上原価の記録はいつやるのか?

という、結論になるのです。したがって売上原価の計算をするためには売れた商品原価を計算する必要があります。それを簡単に行う為には仕入額から在庫を控除すれば売上原価になるはずというみなし計算を前提としておこうことになったのです。

また、会社を始めて1年目であれば上記の数式で成り立ちますが、会社は利益がでる限り継続するものです。したがって2年も以降は前年の在庫も存在しまう。その在庫は期首在庫など呼ばれます。そして区別するために、1年間の最後に残っていた在庫を期末在庫と呼んでいきます。なので検定試験で登場してくるのは下記の考え方になります。

○売上原価勘定での決算整理

ではこの一連の調整の流れを「売上原価勘定」を使うやり方で確認していきます。

範例 A商店の期末商品は25,000円であった。なお、売上原価の計算は売上原価勘定で行うこと。(当期仕入150,000円 期首商品30,000円)

ではまず括弧書きで与えられた前提条件を整理して勘定に示します。

上記がそれぞれの決算整理仕訳前の状況となります。在庫を表す繰越商品勘定には期首商品30,000円が記録されており、ここでも記録の矛盾が生じています。本来あるべき記録は期末商品25,000円であるはずです。

では「売上原価の計算」と「期末商品」の正しい金額を出すために3つの仕訳を起こって生きます。これから紹介する仕訳は全部、決算整理事項としての模範解答となります。

①当期仕入額150,000円を売上勘定へ振替(移動)する。

この①を満たすためには仕入から150,000円を減少させ、売上原価を増加させる仕訳をすればよいですね?したがって下記のようになります。

この仕訳が行われることによって勘定は下記のように変化します。

②期首商品を売上原価に振替(移動)する

これも先ほどと同じ考えです。移動させるために、繰越商品を30,000円減少させて、売上原価を増加する仕訳を行います。

この仕訳を反映させたのが下記の状況です。

ここまでの仕訳で売上原価勘定に全ての記録が集まったことになります。ちなみに期首商品の30,000円は当期仕入と合算されることになります。これは期首商品を、当期仕入とみなしていることになります。

③期末商品を売上原価から抜き、繰越商品に振替(移動)する

この仕訳によって決算整理の完成です。行っていることは、前述しました算式の考え方、そのまんまです。その算式を仕訳で順を追って行っているにすぎません。最後の仕訳を示します。

この仕訳を反映させると下記の通りです。

このように、仕訳を反映させることによって、繰越商品勘定の残高は期末商品の金額に修正されました。そして売上原価も150,000円+30,000円-25,000円=155,000円となり、売上原価が計算されるという仕組みです。

以上、売上原価勘定で売上原価を計算する決算整理仕訳の解説でした。最初にも伝えましたが、試験では90%は仕入勘定でこの処理を行う問題が出題されます。残り10%の論点ですので、時間か掛けすぎないように注意して頂ければと思います。試験直前のエイヤーの気持ちで直前に練習して頂ければ問題ない内容です。

では、今回の解説は以上です。最後までお読み頂き有難う御座いました。

さるや
  • さるや
  • 鎌倉市在住/簿記の元講師/現在は一般事業会社にて経営企画として経験を積んでいます。/専門は工業簿記・原価計算/社会人講座クラスを3級・2級・1級工業簿記を担当

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