簿記3級 「収益の見越し」の仕訳

みなさん、お越し頂きありがとうございます。さるやです。
今回のテーマも日商簿記3級の試験で必ず100%出題される費用、収益の見越しと呼ばれる内容です。「未払費用」「未収収益」といった方がピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。すでに「費用の繰延べ」「収益の繰延べ」の記事を読んで頂いている方は、まったく同じ論点ではありませんので注意ください。
では本格的な内容に入る前にいつものように復習です。
○決算とは
決算の前提を思いだしてください。決算整理の内容を解説するときは必ず前提を話しているのですが、そもそも決算に行われる「決算整理仕訳」の目的は何でしたっけ?

上記に示したように、簿記のルールに沿って、日々記録をしていますが、一部ルールを正しく反映していたとしても防ぎようがない記録のズレが発生してしまいます。記録のズレというのは「一定期日の財政状態」「一定期間の経営成績」という視点を中心に考え貸借対照表や損益計算書を正しく作成することを考えると修正する仕訳、つまり「決算整理仕訳」が必要になってきます。
今回のテーマは損益計算書の修正、貸借対照表の修正のどちらも絡んできますが、考え方としては損益計算書で報告する金額の修正という点に重きを置いて解説していきます。
では修正の対象となる費用、収益はどのような特徴があるか、その定義を確認します。

今回の対象となる費用、収益は決算日をまたいで来期に支払う、または受取れる費用、収益の内、当期分に属するものが対象となります。その代表的な勘定科目は賃借料や支払利息、受取利息などです。
◆収益の見越し
本記事は収益の見越しについて、利息を例にして解説します。すでに、繰延べの記事をお読みになっている方については、同じような話にですが、違いがあります。繰り返しになりますがご注意ください。
○利息の性質
今回の対象となる費用や、収益は時間の経過によってその支払額や受取額が決定する性質を持っています。時の経過を意識して利息の発生の仕方を図で表します。

上記は黒の矢印の向きが時の経過を表し、赤の点線が利息の増え方を表し、青い三角図が利息額を表しています。例えば100,000円を借入日より利率年3%した場合の計算は100,000円×3%=3,000円と計算されますね。その3,000円は年利率3%分の利息です。つまり年利率は借入金を1年間借りっぱなしの状況の場合の1年後の利息の割合を意味します。上記の図でいうとちょうど1年後の三角形の面積のすべてです。この面積部分が1/1を借入日として1年後の決算日12/31の期間ちょうどであれば、決算整理仕訳はいりません。なぜなら、「一定期間の経営成績」を表す損益計算書の会計期間と一致するからです。
下記のような状況となった場合いかがでしょうか?

示したように、損益計算書の対象期間である会計期間(1/1~12/31)と利息の利払日とのズレが生じます。「一定期間の経営成績」という定義で損益計算書を作成することなので、今回、損益計算書には、決算日を基準にした左側の期間分については報告する必要があります。しかし、利払日が来期となりますので、簿記上では一切その記録がされていないことになります。ちなみに決算日を基準にした右側の期間は損益計算書に記載する必要はありません。この修正を決算にて「決算整理仕訳」で行うことになるのです。では簿記の仕訳で考えていきます。
○貸付した時の仕訳
まずは決算日を迎えるまでに行われていた記録の確認です。4/1に100,000円の貸付が行われたとします。その時の仕訳です。

仕訳は右側、現金100,000円、左側、貸付金100,000円と行われるのみです。貸付日に前もって利息の受取りが行われない限りは利息の仕訳は何もされていません!
○決算日の仕訳
この前提を踏まえて決算日です。前述したように損益計算書に乗せる正しい金額に修正するのが決算整理仕訳です。今回の場合、損益計算書に記載するべき金額が何か月分でしょうか?下記のように考えられますね?

損益計算書に計上されるべき金額と考えると、4/1から決算日12/31までの9か月です。ですが、前述したように利息に関する仕訳は決算日まで何も行われていません。なのでお金はまだ受け取っていませんが、受取る権利が発生した利息をのちにもらうことを見越して計上してしまうのが決算整理仕訳となります。したがって、9か月分の収益(受取利息)を加算する修正が行われていきます。下記仕訳です。

まずは9か月分の受取利息を計上します。3,000円(12か月)÷12か月=250円(1か月分)が計算されます。250円(1か月)×9か月=2,250円(9か月)を右側、受取利息2,250円として仕訳します。
この受取利息は前述したように、来期もらうことになり未収の状態です。未収ではありますが、来期に利息を受取る権利が発生しています。その権利を未収利息(資産)で記録します。左側、未収利息2,250円と仕訳します。以上が決算日にて行われる決算整理仕訳です。
この仕訳によって未収利息の勘定記入と残高は下記の状態となっています。

決算日に9か月分の加算修正がされることにより、受取利息の残高が9か月分に修正されたことになるのです。このように利息の受取日はまだ到来せず、未収であるが当期に属する分については見越して計上することを簿記では「見越し」と言っていきます。
以上が収益の見越しと呼ばれる決算整理仕訳となります。まだ内容には続きがあるのですが、試験上は最低限としてここまでを理解し、問題で解答できるようにしてください。
最後までお読み頂きありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。