簿記3級 「収益の繰延べ」の仕訳

みなさん、お越し頂きありがとうございます。さるやです。
今回のテーマも日商簿記3級の試験で必ず出題される費用、収益の繰延べと呼ばれる内容です。「前払費用」「前払収益」といった方がピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。この論点は「固定資産の売却」と並び受験生にとって苦手意識を持たれている方が非常に多いのが特徴です。2つの共通点としては、時間の経過か密接に関係している点でしょうか。ただ固定資産の売却よりも実に単純に考えられますので安心してください!
○決算とは
毎度のごとくなのですが、決算の前提を思いだしてください。決算整理の内容を解説するときは必ず前提を話しているのですが、そもそも決算に行われる「決算整理仕訳」の目的は何でしたっけ?

上記に示したように、簿記のルールに沿って、日々記録をしていますが、一部ルールを正しく反映していたとしても防ぎようがない記録のズレが発生してしまいます。記録のズレというのは「一定期日の財政状態」「一定期間の経営成績」という視点を中心に考え貸借対照表や損益計算書を正しく作成することを考えると修正する仕訳、つまり「決算整理仕訳」が必要になってきます。
今回のテーマは損益計算書の修正、貸借対照表の修正のどちらも絡んできますが、考え方としては損益計算書で報告する金額の修正という点に重きを置いて解説していきます。
では修正の対象となる費用、収益はどのような特徴があるか、その定義を確認します。

今回の対象となる費用、収益は決算日をまたいで前もって支払った全ての費用、決算日をまたいで前もって受け取った全ての収益が対象となります。その代表的な勘定科目は支払家賃や支払利息、受取利息などです。
◆収益の繰延べ
本記事は収益の繰延べについて、家賃を例にして解説します。すでに、費用の繰延べの記事を読んで頂いている方は費用が収益になっただけの話です。時間がよろしければ復習としてお読みください。
今回の対象となる費用や、収益は時間の経過によってその支払額や受取額が決定する性質を持っています。一般的に家賃は毎月、その都度払うものと感がられますが、不動産を貸している会社によって1年分をまとめて払うということがありえます。その家賃の受取額が損益計算書の対象期間である1年(1/1~12/31)などピッタリ1年分であれば決算日(12/31)をまたいでいませんので決算整理をする必要はありません。家賃の受取りを4月分から1年分であれば12/31の決算日をまたいでしまいます。この場合は決算整理が必要です。図に表すと下記のような状況です。

示したように、損益計算書の対象期間である会計期間(1/1~12/31)と家賃の受取期間(4/1~3/31)で発生しています。「一定期間の経営成績」という定義で損益計算書を作成することなので、今回4/1から決算日12/31までの期間分が受取家賃として損益計算書に報告することになり、残り翌1/1から3/31までの期間は損益計算書に記載する必要はありません。この修正を決算にて「決算整理仕訳」で行うことになるのです。では簿記の仕訳で考えていきます。
○4/1家賃の受取日
まずは決算日を迎えるまでに行われていた記録の確認です。4/1に1年分の家賃を受取っていたとすれば下記の仕訳が行われていて、勘定記入がされているはずです。


○決算日の仕訳
この前提を踏まえて決算日です。前述したように損益計算書に乗せる正しい金額に修正するのが決算整理仕訳です。今回の場合、損益計算書に記載するべき金額が何か月分でしょうか?下記のように考えられますね?

損益計算書に計上されるべき金額と考えると、4/1から決算日12/31までの9か月です。したがって12か月分が計上されている記録から3か月分をマイナスする仕訳が必要になります。その仕訳が下記です。

受取家賃(収益)を減少させる仕訳です。左側、受取家賃3か月と仕訳します。そして右側です。減少させた3か月分の家賃ですが、前もって受け取っています。あくまで記録上の話で減少させただけで、3か月分の不動産を貸す義務が消えてしまったわけではありません。前もって受取った家賃は3か月分の義務として記録します。その時使用する勘定科目が「前受家賃」(負債)です。なので右側、前受家賃3か月分と仕訳します。このように仕訳をすると下記のような勘定記入となります。

決算日に3か月分の減少がされることにより、受取家賃の残高が9か月分に修正されたことになるのです。このように前もって受取った収益を次の会計期間に持ち越しをしていくことを簿記では「繰延べ」と言っていきます。※費用も同じ
今回は家賃を前提にして解説しましたが、同じ時間経過によって金額が決定される前もって受け取れる収益は、決算整理が必要な場合があります。収益を決算日を基準に減少させる仕訳の考え方は全く同じです。その際に義務を記録する勘定科目は「前受○○」(※○○に該当する収益名を当てる)の負債で仕訳します。
以上が収益の繰延べと呼ばれる決算整理仕訳となります。まだ内容には続きがあるのですが、試験上は最低限としてここまでを理解し、問題で解答できるようにしてください。
最後までお読み頂きありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。