簿記3級 商品売買の記録方法1 「掛取引」

みなさん、お越し頂きありがとうございます。さるやです。
今回から日商簿記3級を前提とした、個別論点にスポットを当てて行きます。
個別論点は量が大量に増えていきますので、簡単だからと言っておろそかにせず、問題練習を繰り返すことを中心に復習してください。
では今回のテーマ「商品売買」について解説していきます。「商品売買」については、特別問題ないと思いますが、商売をするために他人から商品(物品など)を買ってきて、他の第3者に売ることです。ちなみに、簿記3級では商企業と呼ばれる会社が題材になります。物作りをして、作った製品を売る工企業(製造業)は登場しません。製造業は2級からの論点になります。
まずは商品を購入してくる時の記録方法から見ていきます。商品を他人に売る目的で購入することを、簿記では「仕入」と呼んでいます。購入する時にお金を払うことになりますので、お金を減らす要因「費用」に属します。
範例 ①他人に販売する事を目的で商品を仕入、代金100,000円を現金で支払った。

上記のように仕訳が起こされていきます。「仕入」は費用ですので、増加したら左側に記録して、現金は資産なので減少したら右側です。仕訳を勘定に移していくと下記のようになります。

続いては商品を販売したときの記録を見ていきましょう。
範例 ②仕入れた商品70,000円分を120,000円で売上げた。代金は現金で受け取った。

仕訳は上記のようになります。売上はお金を増加させる要因だ「収益」となります。したがって右側に記録です。そして現金を受け取っていますので、現金(資産)が増加したので左側に記録です。講師時代によく受けた質問としては、70,000円分の記録は何もしないのか?と言う疑問で固まる方が以外と多かったです。70,000円分の処理は後でまとめて行うことになりますので、今の時点では何もしません。後に後述しますが決算整理と呼ばれる処理で調整します。元帳への写し変えも見ておきましょう。下記のようになります。

以上の内容が仕入と売上の取引の記録方法の基本です。
続けて、今回はもう一つ論点を紹介していきます。「掛取引」と呼ばれるものです。
そもそも「掛取引」という言葉については、経理職に関連する方以外がほぼ聞きなれない言葉であるかと思います。そもそも簿記に触れないとなかなか聞かない話です。したがって、まずは「掛取引」自体の説明をさせて頂きます。
会社は儲けを得ることを目的として、事業を行っています。したがって事業として物品を売ることで儲けを得ている企業は、絶えず他人に売る目的で商品を仕入れ、売上げています。その際に仕入れた都度、売上げた都度お金の支払いをいちいちしていると、業務上の手間や銀行振込、引落の場合に支払う手数料が都度発生してしまい、多くの経費がかかってしまいます。そこで1ヶ月間など決まりをつけて「○月締め、翌月末払い」と言うのが一般的です。詰まり商品を仕入れた月にお金の支払いは発生せず、次の月の月末(30日、31日など)に支払いをするのです。このように後でまとめてお金を支払う、または受取る取引を「掛取引」と呼んでいきます。
余談ですが、昔の漫画やドラマだと飲み屋さんでお客さんが「つけておいてくれ!」と言う台詞が飛び交っていたのですが、最近はコンプライアンス!?の関係なのか、そんなシーンはまず見なくなりました。最近だと、アパレル通販のZOZOが「つけ払い」を始めたニュースで少し話題になった程度でしょうかね。実はこれらの話で登場してくる「つけ」が今回の「掛」なんですよ。講師時代は恥ずかしい話、一般的な企業の支払いサイトを理解してなく、「つけ」の話一辺倒でイメージを沸いていただくことが出来ず苦労しました。
さて、本題に戻ります。簿記では「掛け」にした際の記録方法が登場してきます。「掛け」の記録は2種類あり、商品を仕入れてきたときの「掛け」を「買掛金」と呼び、商品を売上げたときの「掛け」を「売掛金」と呼んで区別して記録していきます。「買掛金」は後でお金を支払う義務が発生したことを表す負債に属し、「売掛金」は後でお金を受け取れる権利である資産に属する勘定科目として記録していきます。
ではそれぞれの取引例を見ていきましょう。取引例では後で支払ったときの場面まで見ていきます。
それでは、範例です。 ③商品を200,000円で仕入れ、全額を掛けとした。

商品を仕入れましたので費用である「仕入」を左側に200,000円記録し、先ほど話ましたように「買掛金」あとでお金を支払う義務である負債が増加しました。したがって右側に記録します。こちらを勘定にすると下記のようになります。

④掛けとしていた商品代金200,000円について、本日、現金で支払った。
下記、仕訳と勘定記入です。(※①の続きとし、関連内容だけを表示)


「買掛金」は負債です。負債はお金を払う義務を表します。今回その義務を200,000円支払ったことによって支払義務をはたしました。果たした義務はなくなります。なので負債の減少と考えて左側に買掛金200,000円を記録して、その際に現金を払っています。現金は資産に属していますので資産の減少と考えて右側に現金200,000円を記録します。
今度は売上側を見てみましょう。
範例⑤商品を300,000円で売上、代金は掛けとした。
下記が仕訳と勘定となります。収益を増加させる要因、売上は右側に記録し、今回は「掛けとした」という表現から「掛取引」したことを読み取ります。売掛金は後でお金を受け取れる権利、資産となりますので権利が増加したことで左側に記録することになります。


範例⑤ 掛けとしていた代金について、本日300,000円を現金で受け取った。
下記が仕訳と勘定です。売掛金としていた販売代金を受け取った話となりますので、お金を受け取る権利を行使しました。権利を行使したため、売掛金は減少します。なので右側に記録します。一方、権利を行使してお金を受け取りましたので、現金が増えました。左側現金となります。


以上が掛取引の内容です。この他にも商品売買では論点に付随する細かな内容が多くあります。また現金払い以外で今回は「掛け」が登場してきましたが、ほかにも数種類お金を支払うタイミングや手法の違いを記録することが出てきます。売上や仕入れに絡めやすい内容となりますので、問題作成者の立場としては非常に難問を作成しやすいことになります。まずは今後登場してくる内容に耐えるためにも、今回の売上、仕入の基本取引と掛け取引をしっかり復習してください。これから毎回最後にお伝えしますが、簿記の勉強は反復練習が基本です。テキストを読んでそのままではなく、ガンガン問題を解いてください。テキストの内容を完璧にしてから進もうとしている方、大変な勉強になりますよ。
今回も最後までお読み頂きありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。