簿記3級 商品売買の記録方法3「 諸掛」

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今回も前回に引き続き、商品売買の論点です。商品売買は基本取引、掛け取引、各々の値引き・返品を見てきました。今回何を見ていくのかというと、「仕入諸掛」「売上諸掛」を一緒に確認していきたいと思います。
「諸掛」と言う言葉ですが、聞きなれない用語であると思います。内容としては特別難しいことはありません。「諸掛」というのは、商品を仕入れ、受け取るまでにプラスαの費用、コストが発生する事があります。荷物を運ぶ運賃や、荷物にかけた保険料などです。販売のときも同様に発送運賃や保険料、又は海外輸出などするときの手数料もかかるかもしれません。このように、仕入れるときや販売するときにかかるプラスαの付随費用のことを、簿記では「諸掛」と呼んでいます。
そして、仕入と売上で区別する場合もあり仕入の付随費用を「仕入諸掛」と呼び、売り上げたときの付随費用を「売上諸掛」と呼んでいるのです。では、問題ではどのように登場してくるのかを、範例で見ていきましょう。
まずは、「仕入諸掛」です。
範例① 商品を仕入、100,000円を掛けとした。なお、商品の発送代金など付随費用5,000円は現金で支払った。(当方負担)


では仕訳を解説していきます。まず後でお金を後で支払う義務の負債、買掛金を右側に100,000円記録します。そして付随費用は現金で払っています。資産の減少なので❗右側に現金5,000円を記録します。今回、付随費用は当方負担とありました。「当方負担」とは自分で払いますっていう意味です。この表現が替わると、記録が違ってきます。別の表現が登場したときに、また説明します。そして、仕入を左側に記録して仕訳は完成です。仕入の金額に注目してください。金額が商品代金100,000円と付随費用5,000円を合わせた、105,000円で記録されています。今回のように、自己負担の付随費用は仕入の金額に含めて記録する事を覚えてください。
この理由は、様々な理由はありまが「商品原価」を適正に記録し、価格決定(値段付け)の時に損をしないような管理をしておくためと思っていてください。100,000円で仕入れた商品を103,000円で売ったとしましょう。この状況であれば利益は獲得していますが、実際は5,000円の付随費用「仕入諸掛」があったら利益は獲得できていなかったことになりますよね。105,000円の商品を103,000円で売ったことになるので2,000円の赤字です。このように、いくら掛けて仕入れた商品なのかを管理をしておくためにも、付随費用は仕入金額に含めて仕訳する事になります。
ではまた「仕入諸掛」からの範例です。
範例② 商品を仕入、代金100,000円は掛けとした。発送代金などの付随費用5,000円は現金で支払った。(先方負担)
上記は①の範例と一部だけ違う問題文となっています。気づけましたか?そう!(先方負担)の文言が変わっていますね。(先方負担)は先ほど①の(当方負担)と違い、取引先が発送運賃を支払う約束であることを示しています。それなのに、荷受のタイミングのさい、「何で一旦自分が払うんだ❗」と言うツッコミはあるかと思いますが、商品発送後の当事者の認識の違いでもあったのでしょう。荷物を受け取る立場である、仕入側として、とりあえず商品は欲しいので、代わりに支払うことを仕訳で表すことになります。
仕訳は下記のようになります。


右側の買掛金と現金は①と一緒です。違うのは左側です。まず仕入の金額ですがここでは、100,000円だけ記録します。理由は先方負担の付随費用は本来自分で負担するお金ではないからです。では一時的に支払った5,000円はと言うと?こちらは後でお金をもらえる記録として「立替金」として記録します。後で先方に請求する権利です。従って、「立替金」は資産となり、権利が発送したら左側に記録することになります。
立替金を請求して支払ってもらったときの仕訳は下記の通りです。
範例③ 先に立て替えてあった発送運賃5,000円について、現金で受け取った。


立替金は資産です。後でお金を受け取れる権利となります。今回は代金5,000円を受け取ったことにより権利が消滅します。このような理由から上記のような仕訳と勘定記入になります。
では今度は「売上諸掛」をみていきます。こちらも内容の中心は「先方負担」「当方負担」の読み取りです。問題文を読むときのポイントとして、意識しておいてください。
範例④ 商品を120,000円で販売し、代金は掛けとした。なお発送運賃8,000円は当方負担となる


今回の「売上諸掛」として登場してきた発送運賃は「当方負担」の旨が書かれています。したがって発送運賃は自分で支払うただの費用です。なので現金で支払っているので右側に現金8,000円、現金を減らした要因として費用の増加、「荷造発送費」が左側に記録されていきます。続いて「先方負担」であったらどうなるでしょうか?
範例⑤商品を120,000円で販売し、代金は掛けとした。なお発送運賃8,000円は先方負担となる。

上記のような仕訳となります。単純に今回も本来は先方が支払うはずのお金をなんらかの理由で一時的に立て替えたと考えてください。なので後でお金を請求する権利である立替金(資産)で左側に8,000円は記録します。
一方で下記のように出題されることもあります。
範例⑤-1
商品を120,000円で販売し、代金は掛けとした。なお発送運賃8,000円は先方負担となる。先方負担分は掛け代金に含めて処理することによる。

問題文の指示のままなのですが、売掛金に合算して記録するケースです。売掛金も後でお金を受け取れる権利である資産です。立替金を同じ性質を持っているので、特別、別途記録として残す必要が無い場合は上記のような処理もあります。立替金を使うのか、売掛金に含めるのかは問題設定をよく考えて判断してください。
判断の仕方として、講師時代の指導方法を記載しておきます。基本は問題文をしっかり読むが基本ですが、問題文に指示がなく他の資料で間接的に指定をしている場合もあります。例えば、日商簿記検定3級の大問1は勘定科目選択方式です。なので問題文に指示がなく、選択欄に「立替金」の記載がなければ「売掛金」を使って処理をするしか解答は導きだせません。「立替金」が存在していれば、積極的に使いましょうと指導しておりました。別解としてどちらで解答しても○になると思いますが、わざわざ「立替金」を設定したのは試験委員の出題意図を感じます。また今回紹介した「諸掛」が絡む問題はこれから紹介する方法で解答してしまうと、採点上は「×」になると言われています。それが下記の形式です。

上記示しました、仕訳の対応関係に注目してください。売掛金は売上と対応関係があります。また荷造発送費と現金も取引の内容として対応関係があります。しかし上記は対応関係で1セット1列になっていなく交差してしまっています。個のような状況を仕訳の「タスキ掛け」と呼んでいます。私が所属していた大手の資格予備校ではこの「タスキ掛け」状態にあった答案として仕訳は「×」にしておりました。恐れらくは「×」の対象になる可能性を疑っているので、大事を取って厳しく「×」にしておりました。実際に試験の採点がどのように行われているかはその現場に行かないと分かりません。救ってあげる空気になっていたり、厳格に行う空気になったりする可能性もあります。最善を尽くしてと言う意味でタスキ掛けを見つけた場合は、絶対に「○」になるような答案の書き方を指導しておりました。皆さんも自分で書いた仕訳を見て「タスキ掛け」の仕訳には注意してください。それさえ最後、確認が出来れば仕訳はわかった内容から答案を埋めていくという方針で問題ありません。
以上、本日は「仕入諸掛」「売上諸掛」の内容を確認しました。問題集の総合問題としては頻繁に登場してくる論点ですので、個別問題でしっかり反復練習して頂き、大問3問対策に向かっていきましょう。
本日もお読み頂き、ありがとう御座いました。