簿記3級 固定資産売却の仕訳
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今回のテーマは「固定資産の売却」となります。こちらの論点ですが、日商簿記3級の第1問目の仕訳問題として出題されることが非常に多い内容です。なぜなら、いろいろな要素を複合して考えないと正解が導きだせないので、正答率が非常に低いのを出題者は知っているのです。日商簿記3級で一番複雑な仕訳問題かもしれませんね!

では、本題の売却時の仕訳を解説する前に、固定資産の取得時の仕訳から、決算整理仕訳をおさらいしてから、売却を解説していきたいと思います。記帳方法が2つありましたが、まずは直接法の売却時の仕訳を確認していきます。
取得時の仕訳
まず取得時は下記に注意して仕訳をしていきましょう。

POINTは上記にありますように、購入代価に付随費用を含めて取得原価として、取得原価を仕訳で使用するのでしたよね?したがって購入代価300,000円の備品を手数料50000円と合わせて現金購入した場合は下記のような仕訳となりました。

決算時の仕訳
固定資産は営業活動のために長期に使用することになります。長期に渡って使用するということは、時間の経過とともに、取得時の価値が劣化していくことになります。その劣化の原因は営業活動のために消費したからと考えます。その消費した部分を簿記3級では定額法において、耐用年数の期間内においては均等に消費したとみなしてしまい計算していくことになります。その際、消費できるのは取得原価から残存価額を差し引いた残りの価値です。残存価額は消費しきっても鉄くずとして価値は残っているだろうなどの想定額となります。1年分(※月割りもあり)の消費した額のことを「減価償却費」と仕訳して勘定記入の記帳方法が「直接法」と「間接法」の2種類がありました。どちらも記帳後の簿価(現在価値)は同じです。
備品(取得原価350,000円・耐用年数8年・残存価額:取得原価の10%・取得日1/1、決算日12/31)の場合の決算整理仕訳を表すと下記のようになります。

どちらの方法で記帳したとしても、該当する備品の1年後の簿価(現在価値)は310,625円と言うことになります。この後の売却において自分で簿価(現在価値)を計算し把握しなくてはなりません。決算がくるたびに固定資産は「減価償却費」の仕訳が行われて、簿価が変動していることを意識して売却の話を読んでください。
★直接法【2019年6月検定より2級の論点です】
では、売却の話に入っていきます。売却するときに意識して欲しいのは売却額と簿価の対比です。売却なので当然、今回も売却した結果「儲け」があったのか、「損」したのかの話が出てきます。ちなみに儲けは「固定資産売却益」の収益で仕訳して、損は「固定資産売却損」の費用で仕訳していくことになります。どちらが出るかは売却額と簿価を比べて売却額が上回っていれば「固定資産売却益」となり、下回っていれば「固定資産売却損」となります。では、範例を見ながら正解への導線を確認していきましょう。
範例① A商店は平成30年12月31日に備品を270,000円で売却し代金は現金で受け取った。(取得日;平成27年1月1日、取得原価350,000円、耐用年数8年、定額法、残存価額は取得原価の10%、記帳方法は直接法による。)
手順① 時系列の整理を行うこと!

上記のように時系列を整理しながら解答していきましょう。時系列を整理するときのPOINTは取得日の次は決算日で区切っていくことです。
手順② 決算を何回してきたかを確認すること!
時系列を整理する理由はこの売却までに何回決算を迎えてきたかです。今回の範例は3回目までを終えています。4回目はまだ未処理です。なぜなら、売却は決算を迎える前に行われる仕訳なので、1年分の消費した減価償却費が記録されていないことになります。
手順③ 未処理の仕訳と売却の仕訳を各々考える。
未処理の仕訳

まず未処理の仕訳がされます。この仕訳によって簿価の修正が行われます。未処理の仕訳を行う前までの簿価は直接法により3回備品が減少させられていました。
350,000円-(39,375円×3年分)=231,875円(直前の簿価)
上記金額からさらに、4回目の仕訳を反映されています。
231,875円-39,375円=192,500円が売却時の簿価(現在価値です。)この簿価を使って売却の仕訳をしていきます。
売却の仕訳

上記のように仕訳されます。備品の簿価が192,500円でしたので、売却したことにより資産が減少します。右側、備品192,500円、そして対価として受け取ったのが現金270,000円となりますので、左側、現金270,000円を仕訳しましょう。そしてこの対比の結果77,500円分の資産を増加させた要因は発生します。固定資産売却益(収益)の勘定科目でその要因を記録していきます。右側、固定資産売却益77,500円です。
このように別々で考えることが出来ますが、検定試験上はこれで正解となりません。同日に行われた一連の仕訳を整理(まとめて)正解となります。注意してください。
手順④ 仕訳をまとめる。

上記のように仕訳を解答していくのが正解となります。直接法の売却は非常に複雑です。落ち着いて仕訳を一つずつ処理して、最後にまとめるようにしてください。
★間接法【2019年6月検定でも3級の範囲です】
では今度は、間接法を採用していた場合の仕訳を確認していきます。記帳方法が違うのみで手順は同じです。
範例② A商店は平成30年12月31日に備品を270,000円で売却し代金は現金で受け取った。(取得日;平成27年1月1日、取得原価350,000円、耐用年数8年、定額法、残存価額は取得原価の10%、記帳方法は間接法による。)
手順① 時系列の整理を行うこと!

一番大切な手順です。直接法のときの繰り返しになりますが、しっかりと上記のような図を用紙に書いて、時系列を整理してください。
手順② 決算を何回してきたかを確認すること!
こちらは範例①のときと同じ状況になりますので、割愛させて頂きます。
手順③ 未処理の仕訳と売却の仕訳を各々考える。
未処理の仕訳

上記のように、間接法を採用していた場合、取得原価から直接減少させるのではなく、減価償却累計額に累積していき、取得原価と減価償却累計額と対比させることにより簿価を表します。ここまでに3回決算を迎えていることから上記のような仕訳が3回行われており減価償却累計額も39,375円×3年分が累積されています。その額は118,125円です。そして未処理であった4回目の仕訳がされたことにより1年分増えて118,125円+39,375円=157,500円が減価償却累計額勘定の残高となります。
売却の仕訳

売却の仕訳の解説をします。まず取得原価350,000円の備品(資産)を手放したため、資産の減少を仕訳します。右側、備品350,000円と仕訳します。そしてこの備品の消費額累計として記録しておいた減価償却累計額も当該備品を売却することにより減少します。左側、減価償却累計額157,500円です。この一行目の仕訳で今回の備品の簿価(現在価値)350,000-157,500円=192,500円の価値が減少したことを表しています。そしてこの対価として受け取った現金は左側、現金270,000円と記録してあげます。192,500円の備品を270,000円の現金に換えることが出来ましたので、資産を増加させた要因右側、固定資産売却損77,500円と仕訳することが出来ます。
試験の正解は直接法と同じくこれで正解とはなりません。未処理の仕訳と売却の仕訳をまとめて一つにすることで正解となります。
手順④ 仕訳をまとめる。


上記のように未処理の仕訳の減価償却累計額39,375円と売却時の仕訳の減価償却累計額157,500円のうち一部が相殺されて、合体後の仕訳になっています。残りの科目は特別相殺されるものはありませんので、そのまま書き写して正解の仕訳が完成となります。
以上が固定資産売却における仕訳の考え方になります。直接法、間接法の両方の手順を示しましたが、手順はまったく同じです。使用する勘定科目に注意して落ち着いて問題に当たっていただければ、必ず解けます!問題練習を繰り返し時、月割り計算ありの問題についても解けるように復習していきましょう。
最後までお読み頂き有難う御座いました。次回も宜しくお願い致します。