簿記3級 決算整理①「売上原価」

決算整理とは日々簿記の記録を一定のルールによって行ってはいるが、処理上いたし方が無く実際と記録とのズレが生じてしまう。そのような部分的なズレをまとめて修正を施していくのが決算であり、修正をおこなう事項を「決算整理事項」とよび、決算整理事項を修正する仕訳を総称して「決算整理仕訳」と呼んでいる。ちなみに「決算」と言う言葉は最後の締めくくり期間を表し、簿記の試験上は期末時点を指すことが多い。
皆さん、起こし頂きありがとう御座います。さるやです。今回は難しい言葉でスタートしました。が、安心してください。何がやりたいか目的を理解することが出来れば決算は難しくありません。では大問5問目の設問で必ず出てくる題材を使って、説明をしていきたいと思います。
とりあえずまずは下記です。
①商品10個を全部で200,000円を仕入、代金は掛けにした。
②商品7個を175,000円で売上、代金は掛けとした。

上記の取引はもう得意になりましたか?問題ありませんよね?このように記録して正解ですが、いざ社長が「販売した7個分はコストどれくらいかかっているの?」と質問を受ければ、10個で200,000円なので1個当たり20,000円で仕入れています。7個売ったので140,000万円が売れたもののコストです。」と答えると思います。でもこの140,000円の記録ってここまでの簿記の勉強の中で、記録をしていたか?と言うと仕訳、総勘定元帳では一切していないのです!したがって、簿記で認められているルールで日々毎日記録していたとしても、売れたもののコストと、売残っている在庫の金額が記録されていない状態になってしまっています。したがって、この2つの矛盾を修正するために「決算整理仕訳」を行って売れたもののコスト「売上原価」と在庫額「繰越商品」の2つ仕訳をすることで同時に計算していくことになります。
まずは、②が終わった時点の仕入勘定を下記に示します。

先ほどから繰り返しとなりますが、仕入勘定は仕入時、仕入値引・仕入返品以外は特別記録はされません。このまま損益計算書を作成してしまうと売上175,000円-仕入200,000円となり25,000円の赤字と言うように本当は175,000円-140,000=35,000円で儲けが出ているのでつじつまが合いません。また販売されず売れ残った在庫3個分も来月、または来年には売れる可能性があります。在庫については一切ないことになってしまいます。
そこで売れ残った在庫を別の場所に移動してあげることで、適切な原価に調整することができるのです。今回新たに登場してくる科目は「繰越商品」勘定の資産の科目となります。言葉は難しいのですが、「繰越」→「持ち越し可能な商品」と言うイメージを持っていただければと思います。一言で言えば「在庫」です。

上記のように売残った3個分の60,000円を仕入から減少させて、変わりに後で売ればお金に変わる「繰越商品」資産が増えたと考えて、繰越商品勘定の左側に記録が出来れば適性な数値に修正できたことになります。ただ簿記です。仕訳がないと、上記のような修正、移動は出来ません。したがって登場してくるのが仕訳です。下記のようになります。

この仕訳を行うことによって、上記のような各勘定への記録が出来て、その結果、仕入残高が200,000円-60,000円となり140,000円の売上原価に修正されました。一方、在庫については繰越商品に60,000円記録したことにより、3個の在庫実績と記録上の一致ができるわけです。
先ほどの内容はまったく手元にもともと在庫がない状況で説明しましたが、毎年毎年、商売をしていれば、もともとの在庫がある状況のほうが普通のはずです。したがって、次は最初から在庫がある前提の流れを解説していきます。
例題
①商品10個を全部で200,000円を仕入、代金は掛けにした。
②商品7個を175,000円で売上、代金は掛けとした。

③本日決算につき、決算整理事項の整理を行う。なお期首時点での繰越商品勘定の残高は60,000円で期末商品は95,000円である
状況を示すと、仕入勘定、繰越商品勘定の③直前の状況は下記の通りです。

何もしていないので、矛盾が生じています。期末時点では95,000円と問題文にあるのに、現在繰越商品勘定には60,000円が記録されています。ではここを修正すると同時に、売上原価も計算して見ましょう。まず考え方としては、繰越勘定を中心にみていったほうが理解がし易いと思います。今回のケースは既に前期からの続きのため前期の在庫が既に記入されている点です。この60,000円については一旦、繰越商品勘定から減少させてあげて、一旦残高を0円にしていきましょう。減少させた60,000円についてはまったくもって消滅したわけではありませんので、今期に仕入れた商品とみなして(仮定して)仕入勘定に移動させていきます。それが下記の仕訳です。


このように仕訳を行うことによって、繰越商品勘定は60,000円-60,000円で残高0円になっている状態です。一方仕入勘定では、今回購入してあった200,000円と今回購入したとみなした60,000円が記録され、仕入の残高は260,000円になっています。仕入の記録がこれで一旦は全て仕入勘定に集まったことになります。実態は期末在庫が95,000円と問題文の指示があるので、先ほどと同じように仕入勘定から在庫として売残っている95,000円を繰越商品へ移動させていきます。その移動の仕訳が下記です。


仕訳の内容に沿って記録した後の各勘定残高を見ますと、繰越商品勘定は60,000+95,000-60,000となり残高は95,000円となり期末在庫に一致しました。仕入勘定は200,000+60,000-95,000となり残高は165,000円となります。この決算整理仕訳が完了した後の仕入勘定の残高のことを簿記では「売上原価」と別途読んでいます。
また今回の範例が前提で決算整理仕訳を行いなさいとの旨の問題があれば下記のセットで解答となります。

この仕訳は大問5問目の精算表作成などでは、90%以上の確立で問題資料の中で問われることが多いため、市販で販売されているテキストを拝見させて頂くと結論、暗記しろ!という指示があったので、講師時代は暗記って…と少し笑ってしまいました。ちなみに暗記の仕方は
仕訳のカタチを覚えることを目的に4つの勘定科目の頭をとって「しいくり、くりしい」が圧倒的に多かったですね。ちなみにこの「しいくり、くりしい」の覚え方は大手資格専門学校の学園長が考案されたとの噂があります。信じるか信じないかはあなたしだいです。(私さるやは、由来の学校で講師をしていました。でも話半分で聞いています。学園長にあう機会が無かったので、真意は分かりませんでした。)
以上、決算整理事項の1論点である「売上原価」の決算整理を解説させて頂きました。本当のことを言うと90%は今回解説した処理方法で十分試験に対応できるのですが、残り10%は「売上原価」を別の方法で行う内容が出てきています。考え方はまったく同じなので、今日の内容を理解された方は特別難しくないです。直前対策エイヤーにてそちら紹介していきます。 では、本日の解説は以上となります。最後までお読み頂きありがとう御座いました。次回も宜しくお願い致します。